ぶながやっ子ハウスでは、家庭でのゆったりと過ごす親子の時間を確保するために、子どもたちの宿題を終わらせてから帰宅するようにしています。その学習支援のほとんどをyamaが一人で受け持っています。一人で受け持つ理由は、一人一人の学習状況をyamaが細かく把握するためです。
間違いから学びたい
学習での子どもたちの間違いには様々なものがありますが、その多くは共通しています。ある子供だけが特別な間違え方をすることは滅多にありません。同じ問題をさせれば多くの子どもが同じところで同じような間違いをすることが多いです。
であるならば、そこには共通した原因があるはずです。その原因について深く考えておけば、他の子どもたちの学習支援にもきっと役に立つと思います。そんな風に考えて、yamaは以前から子どもたちの間違いを写真に撮りためていました。
よくある間違い
次の画像をご覧ください。実際に子どもたちが「わからないから教えて」と言ってyamaの所に持ってきた宿題のプリントの一部です。
こんな間違いをする子どももいます。
これらは低学年の子どもによく見かけるパターンの間違いです。
一つ目は答えの書き方がわからない、と言う間違いです。
二つ目は計算式の間違いですが、子ども自身はそれに気づいていません。
それぞれの間違いについていろいろと考えてみたいと思います。
答えの書き方
この間違いの原因もいくつか考えられます。文章を読み飛ばして数字だけを拾い読みしている場合、文章の字面だけを読んで内容を把握していない場合、さらに、内容まで読んではいるがそれを覚えていられない場合、などが考えられます。じつはこの間違いはとても深刻です。原因がその子の能力というより習慣や姿勢に大きく関わっているからです。こんな間違いを繰り返す子は算数だけでなく、他の科目でも、勉強以外の所でも同じような間違いを繰り返している恐れがあります。できれば早いうちに手直ししておきたいところだと思います。
計算式の間違い
12から7を引くことはできますが、7から12を引くことはできません。この子は、引き算の意味や使い方、式の立て方がよくわかっていない様です。
実は、この間違いはとても多い間違いなのです。近頃の子どもたちの多くは実生活の中で引き算を使うことがありません。それどころか、場合によっては数を数えることすらない子どもたちも少なくはありません。そんな子どもたちにとっては、「引き算では大きな数から小さな数を引く」、「引き算すれば答えが小さくなる」、「12の方が7より大きい」など、そんな当たり前の感覚を身につけることさえ難しいようです。頭ではわかってはいるものの、普段は全く気にしないでいるのでしょう。よく言われる様に、これらの感覚は大きくなれば自然と身につくものです。確かにその通りですが、大きくなってからでは遅いのです。
算数という科目は理科や社会と大きく違うところがあります。それは一度習ったことをその先ずっと使い続けなければならないところです。例えば小学1年生の始めに習った足し算は、その先、大学の数学になっても使い続けなければなりません。理科や社会では分野や単元が変わってしまえば、前に習ったことを使わなくても進んでいくことができます。仮に、小学校低学年のときに引き算が苦手で大学生になって引き算ができる様になったとしましょう。引き算だけについて考えれば、それでもよいのでしょうが、引き算がその他の計算や単元に大きく関わっていることが問題なのです。引き算が苦手であれば、引き算を使う他の計算や単元も苦手であると考えられます。小学校から大学までの間に習う引き算を使う計算や単元はたくさんあります。それらの計算や単元まで一時にできる様になるはずはありません。それだけでなく、小学校から大学生になるまでの間、算数(数学)で苦労し続けて苦手になってしまうでしょう。
手直しできるなら、やはり早いうちに手直ししておいてやった方が良いに決まっています。
ぶながやっ子ハウスでの対策
この様な間違いを防ぐには、自分で問題をよく読んで把握させること、何算を使えば良いか子ども自身に考えさせること、が大切です。
ここで、「自分で」、「子ども自身に」の部分が特に重要なところです。人間は、何度も繰り返し使う能力や特性はどんどん発達しますが、使わない能力や特性はどんどん退化して終いにはなくなってしまうそうです。また、幼い頃ほどその傾向は大きいそうです。ですから、幼い頃から他に頼らず自分の力で解決する姿勢を育ててやる意識を持つことが必要です。でなければ、子どもたちは自分で解決することができなくなってしまいます。うまくできるかできないかにはこだわらず、例え間違ったり失敗したりしてもいいから、子どもたち自身にさせてみることが重要です。とくに、幼い頃にはうまくできたかどうかにはあまりこだわらない方が良いように思います。
学校で出された宿題ですから、基本的には、全く同じ問題ではないにしろ授業の中で同じような問題や似た問題を一度は練習しているはずです。以前に同じような宿題が出されたこともあるかもしれません。であるならば解けて当然であるのになぜ解けないのでしょうか。それは、以前、その問題を習ったときにはあまり考えずに解いてしまった(解けてしまった)からかもしれません。深く考えずに解くことに慣れてしまったのでしょう。(その原因については別の機会にお話ししてみたいと思います。)しかし、そんなことばかり繰り返していると、子どもたちは与えられた問題を自分で考える能力を失ってしまうことになってしまうでしょう。
ぶながやっ子ハウスでは、間違えたりわかないで困っている子どもに、最初は何も教えたりせずに「問題をよく読んでもう一度考えてごらん」と言って突き返します。
それだけでは子どもたちはなかなか正解には辿りつけません。その理由は、子どもたちは自分ではよく読んで考えているつもりだからです。場合によっては「よく読む」の意味がわかっていない場合もあるかもしれません。ですから、ほとんどの場合、子どもたちはすぐにまた、「わからないから教えて」などと言ってyamaのところに戻ってきます。
するとyamaは「じゃぁ、ここで声を出して読んでごらん」と言って子どもたちに問題文の音読をさせます。実際に音読させてみると、わからないと言って持ってきた子どもたちのうちの多くが、問題を音読できない、うまく読めていないことに気づきます。それでは問題が解けるはずはありません。そんな子どもたちに必要なのは、むしろ音読の練習であって算数の練習ではありません。音読もできない子に算数の解き方だけを教えても逆効果になるだけです。うまく音読ができないようなら、その場で2~3回音読の練習だけさせてまた突き返します。まだ何も教えてはやりません。ここまで来て解けるようになる子どもたちが少しずつ出てきますが、それでもまだ全員ではありません。何人かはまた、「教えて」と戻ってきてしまいます。
三度目になるとさすがに何も教えて(手伝って)やらないわけにはいきません。「じゃぁ、一緒に考えよう。」と言って手伝ってやります。
最初はやはり音読させます。
「もう一度、声を出して読んでごらん。」
音読が終わったら、問題分の内容について質問をします。
「何がいるの?」
「何羽いるの?」
「どっちが多い?」
ほとんどの子どもはここまではなんとか答えてくれます。
ここで一旦、答えの一部を書かせます。
「二つある答えの一つがわかったね。じゃぁ一つだけ書いてみよう。どっちに書けばいいかな?」
「『が』がついてるのとついてないのがあるよ。『○○がおおい』、『○○おおい』、どっちに書くのがいい?」
よく見てもらえばおわかりかと思いますが、実はここでもまだ「教えて」はいません。子どもたちが考えやすいように考え方の道筋に合わせて順序よく次々とヒントを出して、子どもたち自身に考えさせるように仕向けているだけです。
ここまで来ればあと一息です。
「いくつ違うか比べるときに使うのは足し算かな? 引き算かな?」
「かもは何羽いたっけ? あひるは何羽いたっけ? どっちが多かった?」
「どっちから引けばいいかな?」
「じゃぁ、引き算の式を書いてごらん。」
この様に手伝ってやることにはとても時間がかかりますし手間もかかります。時間に余裕がなければできません。しかし、このように手伝ってやらなければ、子どもたちは自分から考えるようには成長してくれないだろうとyamaは考えています。
転ばぬ先の杖
中には「かも」や「あひる」が何かを知らないために混乱しわからなくなってしまった子どももいるかもしれません。ですから「かも」や「あひる」を見せてやることが算数の助けになることもあり得るのです。子どもたちにとっては、全く関係がないように見える体験が様々な学習につながっていることも少なくはありません。
昔の子どもたちは、兄弟や家族でお菓子を分け合ったり、お小遣いを持って買い物に行ったりしたものです。そんな体験を通して、様々な感覚を子どもたちは身につけていました。しかし、今の子どもたちにはそんな体験が少ないために、生活の中で身につけるべき様々な感覚を身につけないまま成長しています。そんな感覚がしっかり身についている子どもたちにとっては、小学校低学年の学習などけして難しいものではありません。しかし、そうでない子どもたちにとっては、とても理解できない難しいものになってしまうのです。そうならないために、子どもたちに様々な体験をさせてやってほしいと思います。とくに3~10歳頃までの体験の質と量は、子どもたちの様々な能力や特性に大きな影響を与えていると、yamaは思います。
yamaは、幼稚園や小学校の低学年頃から様々な習い事をいくつもさせるのはよいことだとは思いません。習い事をさせるだけで、様々な能力や特性、自主性や積極性、興味や好奇心を育てたり伸ばしたりすることは難しいと考えているからです。子どもたちの様々な能力や特性をのばしてやりたいなら、ただの習い事ではなく、可能であればボーイスカウト活動やYMCAの野外活動など、子どもたち自身が主体的に行う体験活動に低学年の頃から参加させてやるのがよいと思います。一見、何の関係もないように見えるそんな体験が子どもたちの能力や特性、学習にも大きく影響するからです。