「算数は好きなのに、文章題が苦手なんです。どうしたらよいでしょう。」
これは、以前、yamaが塾に勤めていたときによく親御さんたちから相談されていたお悩みです。
今でも時折、相談されることがあります。
ほとんどの場合、お子さんが低学年であれば、このお悩みは簡単に解決できます。
しかし言い替えれば、高学年(3年生以上)になってしまうとなかなか手直しすることができない厄介な問題でもあります。
算数と計算は別もの
算数と計算は違います。
計算は算数のほんの一部です。計算が得意だから算数が得意とは限りません。字がきれいな子どもが、必ずしも国語が得意であるとは限らないことによく似ています。「国語の成績を上げたいから習字に通わせる」などの話をあまり聞いたことがありません。しかし、「算数が苦手だから計算練習をたくさんさせています」と言った話はよく耳にします。けれども、計算だけを練習しても算数が得意になるとは限りません。場合によってはむしろ逆効果になることもあります。実際にはそんな場合は予想以上に多いのかもしれません。
実は、算数と計算の違いに気づかずに混同してしまっていることこそが、文章題を苦手にしてしまっていることの原因の一つでもあるのです。
ここからは実際の問題や子どもたちの間違いを見ながら、なぜ文章題が苦手になってしまうのか、その理由を考えてみたいと思います。
苦手の理由① 文を読まない(読めない)
文章題が苦手になる理由で最も多いのは、「文字を読まない(読めない)」ことです。
であるなら「文字が読める様になれば苦手もそのうちに解消できるだろう」と安易に考えてしまいがちです。しかし、重要な問題はその先にあるのです。下の画像の問題を見てください。
文字を読まない(読めない)子どもたちに最も多い間違いは次の様なものです。なぜ、このような間違いをしてしまうのでしょうか。考えてみてください。
しき:4-2=2
こたえ:2わ
一つめの理由は、文を読まずに「ヒントの絵だけを見て答えてしまう」からです。ヒントの絵を見てみてください。左側には「4」わのスズメ、右側には「2」わのスズメが描かれています。問題の文を読まずにヒントの絵だけを見て式を作ってしまっているのです。他に、問題文の中に出てくる数量だけをとばし読みして式を作ろうとすることもあります。
苦手の理由② 「しき(式)」の重要性に気づいていない
二つめの理由は、「『しき』と『こたえ』の関係が理解できていない」、「『しき』の重要性に気づいていない」からです。全体的にはそれほど多くはありませんが、勉強が得意な子どもや要領の良い子ども、スピードにこだわる子どもなどには比較的よく見られます。中には「たし算」と「ひき算」の違いを充分には理解できていない子どももいます。
このタイプの子どもたちは、「しき」を作る前に、すでに頭の中で直感的に「こたえ」を導き出してしまっているのです。しかし、早く答えることにこだわるあまり、「なぜ、その様な答えになるのか」、「どんな『しき』で計算したのか」にまで考えが至らないのです。言い換えれば、直感的に答えを導き出すことはできるのに、考えを論理的に組み立てることができていないのでしょう。このタイプの子供たちは次の様な間違いをすることが多い様です。
しき:6-4=2
こたえ:4わ
しき:4+2=6
こたえ:6わ
このタイプの間違いでは「しき」の中に正解が含まれていることが特徴です。
苦手の理由③ 記憶だけに頼っている
近頃、このタイプの子供たちが急増している様にyamaは感じています。このタイプの子どもたちは、深く考えないで、直前に習った問題の解き方をそのまま思い出して使おうとします。同じタイプの問題を繰り返し練習する時にはあまり間違えないのですが、新しいタイプの問題が出題されたときや、以前に習ったタイプの問題が混ざっていたりすると、正解率が極端に落ちてしまいます。中には、解き方だけでなく出てくる数字などまで丸ごと覚えてそのまま繰り返して使おうとすることもあります。同じプリントを何度も使い回したり、数字なども変えないで同じ問題を何度も解かせたりするとこのタイプになることがあるようです。このタイプの子どもたちの間違いに共通する特徴はあまりありません。
ある意味で、このタイプの間違いが一番怖いと言えるかもしれません。このタイプの子どもたちは何でもかんでも覚えてしまおうとします。そのせいで深く考えたり細かく比べたりすることが苦手になってしまう危険性を抱えているタイプです。
このタイプの子どもたちは、自分から進んで考えようとはしません。典型的で単純な問題を扱う低学年の間は調子よく進むのですが、パターンの分析と分類が必要な問題が増える4年生頃から急に成績が落ち込んだりします。
「問題をよく読みなさい」だけでは逆効果
このような子どもたちに「問題をよく読みなさい」と言うだけではあまり効果がなかったり、時には逆効果になることすらあります。そもそも、このタイプの子どもたちは、「よく読む」とはどう言うことかがよくわかっていないのです。ですから、「よく読む」とはどう言うことなのかを教えてやらなければなりません。問題文を「よく読む」とは、「問題文の内容を細かく理解すること」と、「問題文の内容を覚えておくこと」、「問題文の内容をヒントに答えを導き出すこと」などの意味があります。そのことを教えてやらなければならないのです。
yamaがこのようなタイプの子どもたちに教えるときには、必ず、まず音読をさせます。それも1回だけでなく、2~3回は読ませます。そのあと、問題文を手で隠していくつか質問します。
「何がいたっけ(あったっけ)?」、「何人いたっけ(いくつあったっけ)?」、「それからどうなったっけ(したんだっけ)?」、、、
「そしたら増えるのかな? それとも減るのかな?」、「そしたら、足し算かな? 引き算かな?」、、、
「それで何を答えればいいんだっけ?」
子どもたちが上手く答えられなかったら、また音読からやり直しです。
「子どもが文章題が苦手だから」と言って、保護者や指導者が代わりに読み聞かせたり、説明したりしているのを見かけることが、時折ありますが、それでは却って逆効果になってしまいます。なぜなら、その子どもを文章題が解ける様にしたければ、その子自身に問題文をよく読む習慣を育てなければならないからです。大人が代わりに読んでしまったのでは、子どもが問題文をよく読む必要がなくなります。それでは、子どもたちはますます問題文を読まなくなってしまうのです。苦手なことを子どもたちから遠ざけるのではなく、苦手なことに何度も挑戦してみる機会を与えてやることが必要です。
ただ、この方法には時間がかかりますから、普段はなかなか試すことができないでしょう。この方法を試すには、時間に余裕のある夏休みが最適です。できれば、夏休みのうちに試してみてあげてください。